無敗のままリングを降りるのは誰だ!「WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT Vol.22」観戦レポート!
中野幹士、宮田彪我、嶋田淳也らが登場する「WHO'S NEXT Vol.22」をレポートする!
豪華ラインナップの競演!圧巻KOに大番狂わせ!後楽園ホールが沸きに沸いた!
7月6日開催のボクシング「第19回WHO'S NEXT」は、メインイベントで岩田翔吉の世界前哨戦が行われた。この試合をクリアすると、次戦では空位のWBOライトフライ級王座決定戦出場が濃厚なだけに、絶対に落とせない一戦。スカッとKO勝利で王手なるか!
そして「WHO’S NEXT」が激推しする全勝ホープ、村田昴と高見亨介をはじめ、“スピードスター”金子虎旦も揃い踏み!
本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!
岩田翔吉は、WBOライトフライ級1位、WBC1位、WBA3位、IBF7位、WBOアジアパシフィック2位という、正真正銘のトップコンテンダー。ハンドスピードを活かした、ノーモーションの右ストレート、コンビネーションを武器にするボクサーファイター。今年1月の元IBF世界ミニマム級王者レネ・マーク・クアルト戦では、4度のダウンを奪うTKO勝利。攻撃力はもとより、ディフェンスの上手さも際立った。今回の試合に勝てば、現在、空位であるWBOタイトル王座決定戦への出場が濃厚。良い勝ち方をして、世界戦へ弾みをつけたい。
一方、ジャジール・トリニダードは、OPBFライトフライ級6位、WBOアジアパシフィック9位。ガードを高く構えたコンパクトなボクシングも、左フックで飛び込む荒々しいボクシングも両方出来る全勝のボクサーファイター。かつボディ打ちも上手く、ボクシングスタイルは、まるでメキシカンのよう。そのボクシングの幅は、岩田翔吉の“仮想”世界戦の相手として申し分なし。
注目の試合は1回、岩田は、トリニダードのジャブ、飛び込んでの左フックを空振りさせる展開。お互いにクリーンヒットはなかったが、トリニダードのパンチを紙一重でかわす岩田のディフェンスが光った。2回、トリニダードが出したコンビネーションのうち、左フックが岩田の顔面にヒット!岩田はバランスを崩し後ずさりするが、トリニダードの猛攻をかわしきった。
3回、試合は打撃戦の様相に。体格で勝るトリニダードは、左右フックを振りながら体ごとぶつかってくるが、岩田はフットワークでかわし左ボディを返す。次の瞬間、岩田がトリニダードの懐に飛び込むと左アッパーが炸裂!トリニダードからプロ初ダウンを奪う。これまで岩田が放っていた左ボディのタイミングで、左アッパーを打ち込む芸術的なダウン!おそらく目のフェイントでボディを意識させて、裏をかいたテクニック!岩田が、完全に主導権を握った。4回、岩田はトリニダードのジャブの返り際に右ストレートを合わせ、スピードの違いを見せつけると、5回には、トリニダードを空振りさせ、徹底したボディ攻撃でスタミナを削る。
そして6回、岩田は右ボディストレートでトリニダードの腰を折ると、左アッパーを突き上げて上体を起こす。すかさず、そこに左フックをフォロー!トリニダードはバッタリと倒れ、2度目のダウン!仁王立ちで見下ろす岩田と、何とも言えない表情で見上げるトリニダードの構図がドラマチック!試合は再開されたが、岩田の速射砲のような連打にトリニダードは、なすすべなし!レフェリーが試合をストップした。
岩田翔吉選手、世界前哨戦で、これ以上ないパフォーマンスを見せて、圧巻のTKO勝利!まるで詰将棋のような緻密な組み立てから導き出される完璧なKOは、まさに世界を獲るにふさわしいテクニック。いよいよ、いよいよ、いよいよ岩田翔吉が世界チャンピオンになる時がやって来た!
金子虎旦は、WBOアジアパシフィックフェザー級8位、日本13位。アマ戦績56勝13敗と充分な実績を積み、大きな期待を受けて2022年プロデビューし、これまで無傷の5連勝。シェーン・モズリーやティモシー・ブラッドリーを思い起こさせる、日本人離れしたテクニックのあるスピードスター。帝拳フェザー級“花の4人組”の1人で、常にKO勝利が期待される強いプレッシャーにさらされながら、試合の中ですら進化と成長を続けるボクシング・センスに注目したい。
対するマイケル・カサマは、左右フックを強引に振り回す荒っぽいファイター。勝った試合は全てKOという剛腕で、早いラウンドでの決着が多い。昨年9月には、帝拳フェザー級“花の4人組”の1人、嶋田淳也に5回TKO負け。今回は、同じ“花の4人組”金子虎旦との対戦となる。スピードのある金子虎旦を掴まえ、接近戦に持ち込む事が出来るかが勝敗の分かれ目。
試合は衝撃の1回TKOで勝負がつく。その1回、金子はジャブを突きながら慎重な立ち上がり。1ラウンドKOが多いカサマを充分に警戒している様子。しかし、カサマのステップインしながらの左フックが、ちょうど金子のガードの間をくぐり、テンプルにクリーンヒット!決して強振したパワーパンチではなかったが、急所を打ち抜かれた金子はダメージが足にきて、立っているのがやっと。カサマは左右フックを振り回し、クリンチしようとする金子をロープに押し込んで連打!反撃できない金子を見て、レフェリーは試合をストップした。
金子虎旦選手、持ち前のスピードを披露することができずにショッキングな初黒星。まるで、ホルヘ・リナレスがフアン・カルロス・サルガドに1回TKO負けをした試合を思い出した。その試合もスピードスターのリナレスに対し、サルガドが先制の左フックでダウンを奪いTKOした内容だった。しかし、金子選手もリナレスも実力が及ばず敗れたわけではない。対戦相手のラッキーパンチに当たってしまったのだ。一発当たれば試合が決まる、それがボクシングの面白さであり恐ろしさ。金子選手には、「次は倒す」、そんな強い気持ちでリングに帰って来て欲しい。
村田昴は、WBCスーパーバンタム級22位、OPBF4位、WBOアジアパシフィック4位、日本5位。日本国内より先に、海外での評価が高まった元アマチュアエリート。これまで6戦全勝全KO勝利中というサウスポーの倒し屋。最大の武器は、サウスポーから放つ左ストレートだが、右フックでも顔面、ボディともにKOする破壊力を持つ。そのインパクトは、まるで“ゴジラ”級!当然、格の違いを見せつけてのKO勝利を期待する。
ブライアン・ジェームス・ワイルドは、WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級15位。その名が示すように、野性味溢れる荒っぽいボクシングで、これまで無敗の左ファイター。試合中に見せる挑発的パフォーマンスにも余裕を感じさせる。日本初上陸で、村田昴に対して同じボクシングが出来るのか、お手並み拝見。
サウスポー同士の対戦となった試合は1回、トリッキーで大きな動きのワイルドに対し、村田は基本に忠実に、シャープな右リードジャブ、左ストレートで迎え打つ。村田のボディ攻撃が有効か。2回、更に動きが大胆になったワイルドは、左フック、右アッパーを振り回しプレッシャーをかけると右フックをヒット。村田に対して、かつてロイ・ジョーンズがやった、ノーガードで挑発するようなパフォーマンスやアリ・シャッフルで余裕をアピール。
3回、ワイルドは益々調子に乗り、軽い右ストレートで村田の顔面を弾き上げると、打って来いとばかりに、ノーガードで顔面を付きだした。しかし、村田は挑発に乗ることなく、ワイルドの左フックに右クロスをカウンターで合わせると、ロープに詰めてボディを連打。ガードの下がったワイルドの顔面にもパンチを返す。
4回、余裕がなくなったワイルドは、左の大振りを繰り返すが、村田はことごとく見切り空振りを誘う。逆に村田は、シャープでコンパクトなジャブ、左ストレートでワイルドを追い回し左アッパーでグラつかせると、右フックで先制のダウンを奪った!飛び上がって喜ぶ村田のリアクションから、苦しい試合展開が感じられた。5回、村田はこれまでの鬱憤を晴らすかのように、ワイルドを徹底攻撃。ボディでガードを下げさせると、顔面にパンチを返す攻撃が面白いようにクリーンヒット!ワイルドのスタミナとハートを削る。
そして6回、村田が、もう力の残っていないワイルドをワンツーでロープに弾き飛ばし、左ストレートで追い打ちをかけたところでレフェリーストップ!村田が7戦全勝、全KO勝利のパーフェクトレコードを更新した。
村田昴選手、終わってみれば圧勝の内容だったが、これまでにない変則的な相手に、内心手を焼いていたようだ。型破りでトリッキーな選手が、基本に忠実な選手に敗れるパターンは、かつてナジーム・ハメドとマルコ・アントニオ・バレラの試合で立証済み。ワイルド選手に敵意はないが、村田選手を舐めたような挑発的パフォーマンスに対して、痛烈なしっぺ返し!よくやった!村田昴!
高見亨介は、IBFライトフライ級11位、WBO13位、WBC14位、WBOアジアパシフィック1位、OPBF6位、日本1位と全方位的に評価の高い、全勝のボクサーファイター。思いっきりの良い踏み込みと、ぐんと伸びる右ストレートは、軽量級時代のマニー・パッキャオを彷彿とさせる。あっけらかんとKO勝利し、群雄割拠のライトフライ級戦線での最重要人物であることを証明したい。
ウラン・トロハツは、OPBFフライ級15位。昨年7月、OPBF東洋太平洋フライ級タイトルマッチで、チャンピオン桑原拓に挑戦するも4回KO負け。頑丈なフィジカルでプレッシャーをかけて、左フック、左アッパーのパワーパンチを叩きつけるファイター。
1回、高見はジャブでリズムを作ると強烈なワンツーを叩き込み、トロハツのブロックを弾き飛ばそうと、スタートから豊富な手数でプレッシャーをかける。2回、高見は右フック、右アッパーで、トロハツの鉄壁のガードを割るように攻撃。その中で右オーバーハンドがクリーンヒット。3回、トロハツはガードを固めながらも、高見の打ち終わりに左フックを強振するも、高見は冷静に見切るとボディからのコンビネーションで押し返した。
4回、高見はこれまでの直線的な攻撃から、サイドにポジションを変えて左ボディを叩き込みトロハツを揺さぶる。5回、高見は下がりながら誘いのボクシング。トロハツに手を出させ、ガードの隙を狙うが決定打を打ち込めず。逆に、トロハツの左ジャブ、左フックが高見の顔面をかすめる。初めてトロハツが優勢に進めたラウンドか。
6回、再び前に出るボクシングに戻した高見は、トロハツの左フックをスリッピンアウェイでかわしながら、右オーバーハンドを連打。手応えのあるパンチを連続で出す攻撃力が光った。7回、高見は足を使いながらアウトボクシング、ラウンド終盤に細かい連打をまとめて攻勢をアピール。
そして最終8回、高見は初回のように、ジャブでタイミングを掴むとワンツーを打ち込むが、頑丈なトロハツからダウンを奪えないまま試合は終了した。判定は、ほぼフルマークの大差判定で、高見の腕が上がった。
高見亨介選手、残念ながらKO勝利は逃したが、ガードの上でも叩き続けるアグレッシブなボクシングは痛快だった。ラウンドごとに戦法を変えてアタックする姿勢も、この試合を更に面白いものにした。本人も倒して当たり前だと思っているのか、自己評価は低いようだが、KO出来なかっただけで、充分に実力を証明した試合だった。
鈴木丈太朗は、2024年5月プロデビュー。2021年全日本選手権3位、2022、2023年国体3位の実績を持つ元アマチュアエリート。右ストレートを打ち込む技術と自信にみなぎったパフォーマンスは、およそ新人離れしている。完成された隙の無いボクシングは、優勝候補筆頭に疑いの余地なし。
佐野篤希は、2023年7月プロデビュー。出入りの早いフットワークと強打のカウンターを武器に、これまで3戦3勝全KO勝利中のサウスポーのボクサーファイター。一撃必殺の右フック、ガードの間を割る右アッパーの強度、回転数の早い連打も魅力的。実質的な決勝戦で、アップセットを起こす可能性は充分にある。
1回、プレッシャーをかける鈴木の周りを佐野が回る展開。自信満々の鈴木は、佐野の飛び込みに左フックを合わせると右ストレートを強振、パワーで突き放す。2回、プレスを強めた鈴木は、左右フックのカウンターでリングを支配した。しかし、佐野の右フックもヒットし、バランスを崩す場面も。3回、鈴木はジャブ、ワンツーで佐野を突き放すと、右ストレートがクリーンヒット。その後もカウンターを狙い続け、佐野を追い詰める。
そして最終4回、後のない佐野は強引に攻め込むが、鈴木は右アッパーと左フックで迎え打つ。一転、今度は攻守を入れ替え、鈴木からプレスをかけ、右アッパーと右フックで攻め込むが、ガードが下がり攻撃が粗くなった矢先、佐野渾身の右フックがカウンターとなりヒット!鈴木はバッタリと倒れこみ、立ち上がろうとしたがレフェリーの腕に崩れ落ちた。
鈴木丈太朗選手、優勝候補筆頭と目されながら、まさかの敗戦。ダウンを奪われる瞬間まで、試合をコントロールしていただけに悔やまれる試合となった。これが、プロの洗礼というものなのか。
佐野篤希選手、2回にも軽くヒットしていた右フックを、最終回にドンピシャのタイミングで叩き込む、見事な伏線回収!得意としている一撃必殺の右フックで大逆転KOしたことは、これ以上ない自信と勢いに繋がるのでは。やったぜ!ビッグアップセット!
江崎由は、2022年10月プロデビュー。高校時代にはインターハイ出場経験もある、攻撃的なサウスポーのボクサーファイター。昨年のトーナメントでは、東日本新人王に輝いた佐藤佑に準決勝で判定負け。新人王2度目の挑戦で、昨年のリベンジを果たしたい。
対する大橋昌彦は、2022年9月プロデビュー。フルスクワットで120kgを上げる強靭な足腰と、ワンツーを主体としたまとまりのあるボクシングが持ち味の右ボクサーファイター。ずっと立ちたかったという「WHO’S NEXT」のリングで4連勝を誓う。
試合は1回、長身の大橋が長い左リードジャブから踏み込みの早い右ストレートを上下に打ち分け、打たせずに打つボクシングを見せる。2回、江崎は距離を詰め接近戦に持ち込むと、持ち前の攻撃力を発揮。角度のあるパンチをコンパクトに当てて優勢に試合を進める。3回、右ボディから大きなパンチを振る大橋と、ショートパンチを内側からヒットさせる江崎の一歩も引かない打ち合いに。ジャッジの採点が割れそうなラウンド。4回、体格で勝る大橋が右ストレートを出しながら前へ出るが、江崎も手数で応戦。最後までお互いにパンチを出し続け、試合終了のゴングを聞いた。一進一退の打撃戦、判定は0-2で大橋が勝利した。
江崎由選手、豊富な手数でコツコツと小さなパンチを当ててはいたが、大橋選手の突進を止めるまでに至らず。残念ながら今回は押し切られた。
大橋昌彦選手、ワンツー主体のアウトボクシングから、ワイルドな接近戦にスタイルチェンジ!バチバチの打ち合いで会場を大いに沸かせ、東日本新人王準決勝に駒を進めた。この勢いは止まりそうにない。
今大会は、岩田翔吉選手の世界レベルのテクニックとパワーを目の当たりにすることで、ボクシングの奥深さを実感することができた。また、ボクシングの恐ろしさも。この日、帝拳ジムが誇る4人の全勝ホープがリングに上がったが、2人が初黒星を喫し明暗が大きく分かれた。しかし、名チャンピオンと呼ばれた西岡利晃さんも長谷川穂積さんも、敗戦から学び強くなってカムバックしたのも事実。再びリングで出会える日を待っている!
次回7月19日の『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.20 』は、OPBF東洋太平洋ライト級タイトルマッチ「鈴木雅弘VS宇津木秀」の試合を後楽園ホールからライブ配信!お楽しみに!
U-NEXTでは、今回レポートした『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.19』を2024年8月5日まで配信中!
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