これぞボクシングの華、怒涛のKOラッシュ!「WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT Vol.20」観戦レポート!
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これぞボクシングの華、怒涛のKOラッシュ!「WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT Vol.20」観戦レポート!

2024.07.24 13:00

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7月19日開催のボクシング「第20回WHO'S NEXT」は、ライト級以上の比較的重たい階級の試合が多く組まれた。階級が重たくなれば当然パワーも増すので、KOシーンに期待がかかるもの。そんな期待に応えるように、怒涛のKOラッシュで後楽園ホールは割れんばかりの歓声で揺れた!

特にメインイベントで行われた、OPBF東洋太平洋ライト級タイトルマッチ「鈴木 雅弘VS宇津木 秀」は、アマチュア時代からのライバル関係にあった両者のリターンマッチ!

鈴木がリベンジを果たすのか、宇津木が返り討ちにするのか。

本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!

配信開始前、または配信終了しています。

メインイベント 第6試合:12R/OPBF東洋太平洋ライト級タイトルマッチ

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©Naoki Fukuda

×鈴木 雅弘(角海老宝石)vs 〇宇津木 秀(ワタナベ)5回TKO

OPBFライト級チャンピオンの鈴木雅弘は、WBOアジアパシフィックライト級では2位、WBC21位の元日本スーパーライト級王者。わずか6戦目で日本スーパーライト級タイトル獲得後、すぐに王座返上し、適正階級のライト級で頂点を目指す。重くて強い多彩な左リードパンチと巧みなブロッキングが持ち味の技巧派ボクサーファイター。宇津木秀とは、2022年2月の日本ライト級王座決定戦で9回TKO負けして以来の再戦。今回、OPBF王者として、初防衛とともにリベンジを誓う。鈴木得意の先制攻撃が、勝敗のカギとなる。

対する宇津木秀は、OPBFライト級4位、WBOアジアパシフィック10位、日本8位、第63代日本ライト級王者。2022年2月、日本ライト級王座決定戦で鈴木雅弘に9回TKO勝利で、全勝のままタイトルを獲得した。その後3度目の防衛戦で仲里周磨に初黒星を喫しタイトルを失う。そして再起第2戦が、OPBFタイトルをかけた、鈴木雅弘との再戦となった。アマチュア出身の基本に忠実な正統派ボクサーファイターだが、KO率78%の破壊力はこの階級でナンバーワン。鈴木雅弘を返り討ちし、トップ戦線再浮上を狙う。

KO必至のリターンマッチ、勝敗の行方は?

試合は、1回から激しい打ち合いに!至近距離の打ち合いは鈴木の土俵のような気がするが、宇津木もこれに応じる。鈴木は左右フックを叩きつけ、宇津木はインサイドからアッパーを突き上げる!両者のパンチが交錯した拮抗したラウンド。

2回、鈴木はプレッシャーをかけて、パンチを出しながら前へ出続けるが、ラウンド中盤以降は宇津木も足を止めて打ち合いに応じる。相打ち覚悟のパンチの応酬は、鈴木の左フックが有効に見えた。

3回、流れを変えたい宇津木は、リードジャブを増やし先手を奪う。鈴木の1発に対し、3発返すようなジャブでリズムを掴むと、ガードを割る右アッパー、左ボディストレートもクリーンヒット! まるで鏡合わせのような相打ちでも打ち勝っている印象。一方で鈴木は、ハードパンチの強振が増えるが、空振りが目立つようになる。

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©Naoki Fukuda

4回、宇津木は引き続きジャブでコントロール。ペースを取り戻したい鈴木は、パワーパンチで逆転を狙うが、逆に左フックをカウンターでもらってしまう。鈴木の焦りと宇津木の冷静さが対照的なラウンド。ここで4回を終えての途中採点が公開されたが、ジャッジ3名とも39-37で宇津木が優勢だった。

そして5回、宇津木はリズミカルにジャブをヒットさせると、鈴木の周りを回るようにコンパクトなパンチを集める。力みが無いのでスピードと的中率は高い。対して鈴木は、大きなパンチで逆転KOを狙うが宇津木を捉えることができずに、ますますダメージと疲労で動きが鈍る。それを見た宇津木は、ササっと足をシャッフルさせると、ギアを一段上げ、右アッパーから返しの左フックのカウンターで鈴木をグラつかせる!ロープを背負った鈴木に対し、宇津木は連打を浴びせるが、ここでもパンチはコンパクトかつ的中率は高い!鈴木が防戦一方になったところで、レフェリーが試合をストップした。いつの間にか超満員になり、大歓声の中で行われたOPBF東洋太平洋ライト級タイトルマッチは、宇津木秀が新チャンピオンとなった!

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©Naoki Fukuda

鈴木雅弘選手、リターンマッチでの雪辱ならず。ただし、持ち味である好戦的なファイトスタイルは、多くのファンが望むところ。敗れはしたが、ボクシングファンを熱狂させるファイトを演じたことに最敬礼を送りたい。

新チャンピオンとなった宇津木秀選手、これでKO率を80%に上げた訳だが、決してマイク・タイソンのような一発ハードパンチャーではない。コツコツと小さなパンチを積み重ね、ダメージを蓄積させてから仕留めにかかる緻密なボクシング。戦術とそれを遂行する技術に長けたクレバーな試合運びは、“物語”を読むように起承転結があり面白い!

現・日本王者の三代大訓選手との対戦が噂されているが、三代選手もボクシングで“物語”を語れる技巧派なだけに、両者の対決が実現したならば、“名作”になることは間違いはない。

セミファイナル 第5試合:8R/69.4kg契約

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©Naoki Fukuda

〇辻本 純兵(帝拳)vs ×長濱 陸(石田)1回TKO

辻本純兵は、WBOアジアパシフィックスーパーウエルター級11位、日本10位。2018年全日本ウェルター級新人王。187㎝の長身から繰り出す右ストレートが武器の右ボクサーファイター。長いリーチを活かした中間距離での打ち合いが得意で、スムーズに出る手数と的中率でポイントを重ね、チャンスを作りたい。

長濱陸は、日本ウェルター級8位。2015年度全日本ミドル級新人王、第41代OPBF東洋太平洋ウェルター級王者。井上岳志、豊嶋亮太ら強豪と対戦経験もある、老獪なボクサーファイター。2021年に右目の怪我を理由に一度は現役を引退するも、2023年に現役復帰。しかし、復帰後は1勝2敗、この試合で連敗脱出を狙う。

試合は、わずか99秒で決する。1回、長身の辻本は、ジャブを打ちながら中間距離をキープ。長濱が一歩踏み込めば、辻本が一歩下がる。距離を詰めたい長濱は、左ボディストレートで攻め込むが、辻本は打ち落としの右ストレートを狙う。やや距離が詰まり、長濱が左フックを振るった直後、辻本のコンパクトな右ストレートが長濱のアゴにクリーンヒット!長濱は、堪らず尻もちをつきダウン!辻本が先制のダウンを奪う。立ち上がった長濱は、力のこもった右フックで反撃するも、辻本の右ストレートと左フックに弾き飛ばされ、吸い込まれるようにコーナーに。最後は辻本が右ストレートを打ち落とすと、長濱は文字通りリングに崩れ落ちた。辻本が、1回99秒で衝撃のTKOで勝利した。

敗れた長濱陸選手、痛烈なダウンを喫し、意識朦朧とした中でもファイティングポーズを取り続けていたように見えた。まるで体に染みついているような、骨の髄までボクサーなんだと感じた。

辻本純兵選手、これ以上ない勝利でセミファイナルを大いに盛り上げた!長身から打ち下ろす右ストレートは一撃必殺!これで5連勝!早くも次戦が楽しみだ!

第4試合:8R/スーパーバンタム級

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©Naoki Fukuda

〇福井 勝也(帝拳)vs ×ベン・マナンクィル(比)4回終了TKO

福井勝也は、WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級1位、OPBF14位、日本8位。高校総体ライトフライ級優勝などアマ戦績59勝16敗。プロ転向後も、これまで7戦全勝。強いリードジャブから、多彩なコンビネーションを的確に当てる攻撃力、クリーンヒットを許さない防御力、そしてスピードとスタミナも合わせ持つ、技巧派ボクサーファイター。打たせずに打つボクシングで、元チャンピオンをKOで沈めたい。

ベン・マナンクィルは、元WBOアジアパシフィックバンタム級王者。2019年5月、ストロング小林佑樹に敗れてタイトルを失い、一時リングから遠ざかる。2022年に再起後は2勝2敗。KO率は高くないが、出入りのスピード、シャープなカウンターが武器のサウスポーのファイター。

1回、福井は左リードジャブでマナンクィルを牽制。時折、右ストレートのフェイントを織り交ぜながらマナンクィルを追う。マナンクィルの飛び込みざまの右フックにもステップワークで空振りを誘う冷静さが福井らしい。2回、攻防兼備で隙の無い福井に対し、マナンクィルは左右フックの大振りで対抗。豪快なスイングの左フックがヒットしポイントを奪い返す。

しかし3回、大振りのマナンクィルは、スタミナが切れてきたのか、フックの打ち終わりにクリンチをして、福井がバックステップすると、そのままへたり込む展開が続く。そんな中、福井の左ボディがヒット!これは、スリップにごまかす事が出来ずに、ダウンを取られる。迎えた4回、福井はマナンクィルをコーナーに詰めると左ボディ一発!打ち終わりにマナンクィルのクリンチを避けるように、スッとステップバックするところが技あり。マナンクィルは体を支える事が出来ずに両手をつき再びダウン!直後に見せた苦笑いが痛々しい。後のないマナンクィルは、頭から飛び込むラフファイトを持ち込むが、福井は冷静にステップワークでポジションを入れ替えると、さらに左ボディを追い打ちし、この試合3度目のダウンを奪う!なんとか立ち上がったマナンクィルだが、反撃むなしく福井の左ボディをまたもや被弾し、この試合4度目のダウン!かろうじてゴングに救われた。しかし、マナンクィル陣営は、ここでギブアップ。福井のTKO勝利となった。

福井勝也選手、これで8戦全勝6KOと連勝記録を更新!現在のWBOアジアパシフィック王者は、9月に井上尚弥選手との対戦が決まったTJ・ドヘニー選手だが、空位になることは確実。福井選手の次戦が、その王座決定戦になる公算が高い。もはや期待しかない!

ちなみにマナンクィル陣営に、世界的プロモーターのショーン・ギボンズ氏がおり、大声援を送り目立っていたが、この試合の主役は、福井勝也選手だった。

第3試合:6R/フェザー級

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©Naoki Fukuda

〇高 優一郎(横浜光)vs ×コウ・ジュンサイ(中国)判定3-0

高優一郎は、2024年5月プロデビュー。拓殖大学ボクシング部で活躍し、全日本選手権3位の実績を携えてB級デビュー。帰省中の元旦、能登半島地震に遭遇し、救援物資の募集や仕分け作業で被災地を支えた。デビュー戦では、完璧なポイントアウトで技術の高さを披露したが、プロ第2戦では、倒し切るボクシングに期待がかかる。

コウ・ジュンサイは、2019年5月プロデビュー。情報の少なさが不気味な中国からの刺客。初登場の日本のリングで存在感をアピールしたい。

1回、お互いにガードを固めジャブを突きあうが、高のワンツーと左ボディが有効だった。2回、さらに手数を増やした高は、巧みな上下を打ち分け、強弱をつけた攻撃でボディブローに繋げる。コウは高の打ち終わりに右ストレートを狙うが、いかんせん手数が少ない。3回、高は圧倒的な手数でコンビネーションを打ち込むが、コウは鼻血を流しながらも、その攻撃に耐える。ここで、体だけではなく気持ちも強い選手だと判明。

4回、5回とプレッシャーをかけて手数で上回っているのは高だが、やや攻めあぐねている印象。そして最終6回、コウは大きな声を出して気合いを入れ直すと、高の猛攻を凌ぎ、右ストレートをカウンターで合わせる。高も試合を通して有利に攻め続けていたが、コウを倒すことは出来なかった。判定は、ほぼフルマークで高の腕が上がった。

高優一郎選手、デビュー戦同様に完璧なポイントアウト。KOすることは出来なかったが、豊富な手数とプレッシャーのかけ方は、デビュー2戦目とは思えない完成度。今回は、コウ・ジュンサイ選手のタフネスに手を焼いたが、キャリア形成には重要な一戦となったのでは。

第2試合:4R/東日本新人王予選ミドル級

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©Naoki Fukuda

×山田 健太郎(高崎)vs 〇伊吹 遼平(三迫)1回TKO

山田健太郎は、2022年11月プロデビュー。今年5月に行われたトーナメント初戦では、ケニアン・サムライ選手を番狂わせの初回TKOに下し、4戦目にしてプロ初勝利。乱打戦は避けられないが、1回を乗り越えることが出来れば、2回以降に勝機あり。

伊吹遼平は、2023年5月プロデビュー。「水戸黄門」でおなじみ、俳優・伊吹吾郎さんを祖父に持つ豪腕ファイター。デビュー戦こそ2回TKO勝利したが、その後は2連続KO負け。試合開始のゴングと同時に、嵐のような猛攻が持ち味だが、その攻撃を凌がれるとスタミナに難あり。攻撃力はもとより、防御技術の進歩も試される。

試合は大方の予想通り1回で終了する!先制攻撃が持ち味の伊吹だが、試合開始のゴング直後は、静かな立ち上がり。ジャブの差し合いで様子をみる。しかし、山田の右フックをダッキングでかわすとスイッチオン!伊吹は、そのまま体のバネを使い、左フックでボディを叩くと、すかさず顔面にワンツーを返す。特に後から放った右ストレートの威力は凄まじく、山田はロープに弾き飛ばされ地団太を踏む!レフェリーは、ロープがなかったらダウンしていたであろうと判断し、山田にスタンディングダウンを宣告、カウントを取った。試合は再開されたが、立っているのがやっとの山田に、伊吹は右ストレートで追撃。バランスを崩した山田に連打をまとめたところで、レフェリーは試合を止めた。

伊吹遼平選手、これまでの荒々しい攻撃的なボクシングでは、カウンターをもらうリスクが高かった。しかし今回は、ブロッキングやダッキングなど防御技術にも進化が見られた。その上、チャンスでパンチを集める決定力は健在!ますます手が付けられなくなってきた!

山田健太郎選手、アップセットならず。残念ながらパワーの差は埋められなかった。

第1試合:4R/東日本新人王予選スーパーライト級

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©Naoki Fukuda

〇新村 康行(SRS)vs ×齊藤 裕大(KG大和)1回TKO

新村康行は、2023年3月プロデビュー。ブラジリアン柔術黒帯で数々の実績を残し、30歳を過ぎてからボクシングに転向。デビュー戦では、菊地音央選手に判定勝利。強いフィジカルで接近戦を制したい。

齊藤裕大は、長身の左ボクサーファイター。リーチを活かし懐深く構え、距離を取ったボクシングで、左ストレートを打ち込みたい。

サウスポー同士の一戦は1回、新村がガードを高く構えプレッシャーをかけ、左フックで飛び込む展開。長身の齊藤は、右リードジャブ、左ストレートで距離を作りたかったが、右が伸びきったところに、新村の左フックがヒット!やや巻き込むようなパンチだったが、新村が最初のダウンを奪う。新村は再開後、今度は右フックで齊藤をグラつかせると、ガードを弾き飛ばすようなコンビネーションを浴びせる。最後は新村の左フックが、齊藤のアゴを打ち抜き2度目のダウンを奪うと、レフェリーはその場で試合を止めた。

新村康行選手、ガッチリとした体格から繰り出される強いパンチは、さすが格闘家!これで戦績は2勝2分。新人王優勝したあかつきには、B級昇格だ!

齊藤裕大選手、KG大和のジムメイト、阿部麗也選手が見守る中での勝利ならず。まずは、心身のダメージの回復に努めてもらいたい。

今大会は、KO劇に次ぐKO劇で展開の早さに目が離せない試合が続いた。伊吹遼平選手のようなハードパンチャー、福井勝也選手のようなボディスナッチャー、辻本純兵選手のようなヒットマン、そして宇津木秀選手のようなオールラウンダーとスタイルの異なる選手が、それぞれのKOシーンで魅了した。特にメインイベントに出場した、宇津木秀選手のKOまでのプロセスは興味深かった。先に当てた方が勝ち、といった強打者同士のスリリングな打撃戦も面白いが、緻密な駆け引きの末のKOもまた、ボクシングの魅力の1つ。


次回8月16日の『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.21 』は、日本ライト級タイトルマッチ「三代 大訓VS宮本 知彰」、日本フライ級タイトルマッチ「飯村 樹輝弥VS見村 徹弥」の試合を後楽園ホールからライブ配信!

今回、劇的勝利を飾った宇津木秀選手の将来の対戦相手、三代大訓選手が出場するので、お楽しみに!


U-NEXTでは、今回レポートした『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.20』を2024年8月18日まで配信中!

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