無敗のままリングを降りるのは誰だ!「WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT Vol.22」観戦レポート!
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無敗のままリングを降りるのは誰だ!「WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT Vol.22」観戦レポート!

2024.09.17 11:00

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9月7日開催のボクシング「第22回WHO'S NEXT」は、ダブルタイトルマッチ!

日本スーパーライト級タイトルマッチでは李 健太が、OPBF東洋太平洋フェザー級王座決定戦では中野幹士が、それぞれの王座と無敗レコードをかけてリングに立つ!

また、宮田彪我、嶋田淳也といった帝拳ジムの無敗ホープもアンダーカードで登場!

負け知らずの男たちの熱い試合の連続に、後楽園ホールは燃えた!

本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!

メインイベント 第5試合:10R/日本スーパーライト級タイトルマッチ

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©Naoki Fukuda

〇李 健太(帝拳)vs ×山本ライアン ジョシュア(ワタナベ)3-0判定

日本スーパーライト級王者、李健太。世界ランクはWBC23位、OPBF2位、WBOアジアパシフィック2位。アマチュア戦績112戦102勝10敗、高校6冠と日本記録62連勝を誇る。プロ転向後は、長身のサウスポーを活かした懐深いボクシングでこれまで無敗。シャープなジャブと長い左ストレートは、シンプルだが最大の武器。壮絶な打撃戦を制して奪取した王座の今回が初防衛戦となる。戦績、キャリアを比較しても、勝って当たり前のマッチメイクの中で、KO決着は誰もが望むところ。

挑戦者、山本ライアン・ジョシュアは日本スーパーライト級9位。2017年のデビューから勝ち負けを繰り返し、2020年の東日本ライト級新人王決勝戦では、前日計量で体重超過のため失格、1年間のライセンス停止処分を受けた。再起後は階級をスーパーライト、ウェルターに上げてキャリアを積むも3勝3敗。今回、なかなか挑戦者が見つからない中で、一世一代のチャンスが巡ってきた。接近戦で左右フックを打ち込むのが信条。当たって砕ける覚悟が必要。

技巧派アマチュア・エリートと叩き上げファイターという対照的な両者がぶつかる一戦には、波乱が待ち構えていた!

1回、長身サウスポーの李健太は、右リードジャブから左ストレートを打ち下ろし、クルっと右にステップしポジションを変える。この一連の流れが優雅で技術の高さを感じさせる。一方、山本は、左フックをダブル、トリプルで振り回し飛び込んでくる特攻スタイル。まずは、パンチが当たる距離に近づくところから始まる。李健太は、山本の強振を空振りさせ、自身の左ストレートを当てていたが、左頬に小さな傷を作った。

2回、接近したい山本は、体ごとぶつかっていくようなラフファイトで、李健太のペースを乱す。その時に、偶然のバッティングで李健太が左目上をカット。

3回、李健太は、山本の突進をステップワークで回避するとアッパーで迎撃。4回、李健太は足を止め、強い左ストレートと右フックで打ち合い、今度は山本のペースとバランスを乱す。5回、李健太はシャープなジャブを連打し、再び中間距離に立て直すが、山本の強引なスウィングに押される場面も。そして、5回終了時点で公開された途中採点は、49-46、49-46、50-45でジャッジ全員が李健太を支持した。

6回、山本は、ジョー・フレイジャーのようにボビングしながらプレスをかけるが、逆に李健太の左アッパー、右フックがクリーンヒットしグラつく。7回、李健太は再び足を止めての打ち合いを選択。巻き込むような右フックが有効だった。8回、少し疲れの見えてきた山本に対し、李健太は右リードジャブでコントロール。理想的なヒット・アンド・アウェイを展開する。9回、李健太は、鋭角に突き刺す左右ボディで、追い足の鈍った山本のスタミナをさらに削る。

そして最終10回、ポイントで大きくリードしている李健太は、9回に続き強烈な左右ボディでKOを狙う。山本も立っているのがやっとだったが、最後の力をふり絞って反撃!しかし両者、決定的なシーンがないまま試合終了となった。判定の結果は、99-91、99-91、100-90の大差判定勝利で、李健太が初防衛に成功した。

李健太選手、ほぼフルマークで完勝し、鬼門の初防衛に成功!戦績は、9戦8勝(2KO)1分となった。しかし、採点以上に苦労した試合内容だったことを、初回に作った頬の傷が物語っている。今後の防衛ロードに向けて気合いが入り直したのでは。

山本ライアン・ジョシュア選手、ジャイアントキリングならず。最後までリングに立っていたという、挑戦者として最高の仕事をした。

セミファイナル 第4試合:12R/OPBF東洋太平洋フェザー級王座決定戦

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©Naoki Fukuda

〇中野 幹士(帝拳)vs ×ブリックス ピアラ(比)4回KO

中野幹士は、OPBFフェザー級1位、WBOアジアパシフィック3位、日本6位、WBCでは26位。アマ7冠の実績を携え2018年プロデビュー。これまで10戦全勝9KOの高いKO率を誇り、マノス・デ・アセロ(鉄の拳)のニックネームを持つ。顔面でもボディでもワンパンチで試合を決める左の破壊力は驚異。遂に掴んだタイトル初挑戦、そして初のサウスポー対決だが、今回も1ラウンドから目が離せない。

ブリックス・ピアラは、OPBFフェザー級14位。チャンスとあらば、右フックを強振するサウスポーのファイターだが、ステップワークを駆使したテクニックも併せ持つ。和気慎吾に勝利したこともある、元WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王者、ジュンリエル・ラモナルを3回TKOで下すなど現在4連勝中。

試合は1回、中野を中心にピアラが左に周る慎重な立ち上がり。中野はフェイントを織り交ぜて、まだ手数こそ少ないが、いつでもハードパンチを打ち込む用意があることを感じさせる。そんな中、中野の挨拶代わりのヒダリボディストレートがヒット!ピアラの腰が引けた。2回、中野の強打を警戒してか、ピアラは積極的には手を出さない。中野はプレッシャーをかけながら、コンビネーションを打ち込み最後に右ボディをヒット。

3回、中野は、逃げるピアラを追う展開。力強いジャブから左ストレートを打ち込む。ヒットしなくても迫力は充分に伝わる、これぞ鉄の拳!ピアラが距離を取ると左ストレート、接近すると左フックを狙い打ち。攻めあぐねたピアラが、クリンチで逃れようとしたところで、その腕を振りほどき左ボディを突き刺す!ピアラは悶絶してしゃがみ込みダウン!なんとか立ち上がったが、ファイティングポーズをなかなか取ることも出来ない。ボディも効いているが、ハートのダメージの方が効いているように見えた。しかし、ここでゴングが鳴りピアラは救われた。

そして4回、ゴングが鳴ると同時に中野は徹底的にボディ攻撃!左右ボディの連打を繰り返し、ピアラをロープに詰める。フィニッシュブローは、右ボディからストマックへの左ボディブロー!ピアラは、キャンバスに這いつくばり立ち上がることができないまま、10カウントを聞いた。“鉄の拳”中野幹人が、全勝のままOPBF東洋太平洋フェザー級チャンピオンを獲得した。

中野幹人選手、ファンの期待通り、KO勝利での初タイトル獲得おめでとう!これで戦績は11戦11勝(10KO)無敗。ノーダメージで終えたように見えた試合だった。“鉄の拳”の異名が示す通り、パンチの強さは破格。この日、初タイトルを獲得したが、まだまだ通過点に過ぎない!

第3試合:8R/62㎏契約

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©Naoki Fukuda

×宮田 彪我(帝拳)vs 〇川口 高良(協栄)7回TKO

宮田彪我は、2023年2月にアマ通算34勝の実績を引っ提げてプロデビューし、現在3連勝中。中間距離での打ち合いが得意なテクニックのあるボクサーファイター。1戦目は防御力、2戦目は攻撃力、3戦目では打たせずに打つ攻防兼備のボクシングを披露、試合を重ねるごとに進化を見せる。無敗の日本ランカー相手に、プロとしての実力が試される重要な一戦。打ち合って勝つことに意義がある。

川口高良は、日本ライト級13位。2022年全日本ライト級新人王。小学校から大学までサッカーに打ち込み、国体選抜選手となりJリーガーを目指すが、膝の故障で断念。大学卒業後にボクシングに転向する。マイク・タイソンのようにガードを固め、飛び込みざまに右ストレート、または左フックを叩きつける右ファイター。引き分けをはさみ3連続KO勝利中、打ち合いは望むところ。

バチバチの打ち合いになること必至の一戦!試合は1回、身長で上回る宮田が、鋭いジャブを間髪入れずに打ち込み、川口の突進を許さない。それでも川口が距離を詰めると右アッパーで迎え打つ。2回、宮田のジャブが走り続ける中、川口はボディストレートから接近すると、続けて出した右ストレートが宮田の顔面にヒット!宮田もそれに応えるかのように、両者が頭をつけての接近戦に。自信満々の宮田が、川口の土俵で戦っているように見えた。

3回、またしても頭をつけての打ち合いに。宮田は左右のフックをボディに集め、川口をコーナーに押し込む。接近戦なら川口が有利かと思われたが、フィジカルの強さでも宮田は負けていない。宮田は、川口のガードの外から回り込む左右フックを打ち込み、ラウンドを支配した。4回、さっきは押し込まれた川口が、リング中央で踏ん張り、頭が当たる程の距離で打ち合い!両者、一歩も引かないパンチの応酬で勝利への執念を感じさせる。

そして5回、足を止めての打ち合いの中で、川口の右フックがヒットした際に宮田が左目上をカット!試合は中断され、宮田がドクターチェックを受ける。バッティング(頭と頭の衝突)でカットし試合続行不可能な場合は、そのラウンドを含めた判定になるのと違い、パンチのヒッティングでカットし、試合続行不可能な場合は、カットした方がTKO負けになるのがボクシング。ここまで優勢に試合を進めていただろう宮田が、一転してTKO負けのピンチにさらされる!試合再開後、宮田は勝負を急ぎ強引に攻め込むが、川口も右ストレートで迎え打つ!6回、このラウンドも足を止めての打ち合いが続くが、川口の連打に宮田が、少しだが後ずさり。両者ともに手数が多く甲乙つけ難い互角の打撃戦だが、流れは川口に傾きかけている。

そして7回、またしてもリング中央での接近戦!この回を含めて残り2ラウンド、宮田としては、中間距離で傷を庇いながら判定勝ちに逃げ込む作戦もあっただろうが、打ち合いを選択。確かに前半のポイントに貯金がなければ、1ラウンドも落とせない。また、川口を前に出させた方がリスクが高いと判断したのか。しかし、パンチの応酬の中で2度目のドクターチェック!試合続行不可能となり、川口のTKO勝利が宣告された。

川口高良選手、前半の不利を跳ね返し、TKO勝利で無敗をキープ!戦績を10戦9勝(6KO)1分とした。フィジカルの強さと豊富な手数で、技巧に勝る宮田選手に初黒星を付ける金星ゲット!これからのマッチメイクが楽しみな選手だ。

宮田彪我選手、プロ初黒星で戦績は4戦3勝(1KO)1敗に。4回まではリードしているように思えたが、5回のカットで流れを変えられてしまった。しかし試合後の表情は、悔しさを滲ませながらも前を向いているように見えたのが嬉しい。

第2試合:8R/フェザー級

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©Naoki Fukuda

〇嶋田 淳也(帝拳)vs ×リ ジャーミン(中国)判定3-0

嶋田淳也は、WBOアジアパシフィックフェザー級5位、日本8位。アマ戦績81戦58勝23敗で、2年連続で国体3位の実績を持つアマチュア・エリート。ボクシングの教科書から飛び出してきたかのような美しいフォームが特徴的な技巧派ボクサー。精密機械のような正確無比なテクニックで、これまで対戦相手につけ入る隙を与えてこなかったが、今年6月の廣瀬祐也戦でドローとなり、デビューからの7連勝を逃す。しかし未だ無敗、巻き返しに期待。対するリ・ジャーミンは、2017年4月のプロデビューから、2021年1月の7戦目まで中国国内でキャリアを積む。その後、3年間のブランクを作り、2024年3月にタイで同じ中国人の選手と対戦するが判定負け。今回が初めての日本のリングで、初めての外国人との対戦となる。

試合は、嶋田淳也のテクニック博覧会となった!まずは1回、シャープなジャブを刺しながら、流れるようなワンツーからの左ボディのコンビネーションで魅せる。2回は、右ストレートで、3回は右ボディストレートで魅せる。 まるで各ラウンドごとに攻撃パターンを変えている印象。4回には、ディフェンス技術の高さ、5回はガードの上を打たせてから、打ち終わりにカウンターで右ストレートを合わせた。リ・ジャーミンも打たれっぱなしではなく、手数は返しているが、嶋田の固いガードを崩せない。6回、嶋田はプレスを強めると、これまでよりも力のこもった右ストレートで、リ・ジャーミンの顔面を跳ね上げると、左右連打の集中砲火を浴びせる。

7回、嶋田は打ち合いの中で、左フックの相打ちを狙う。これは、嶋田にしては珍しくリスクを負った攻撃だが、カウンターでヒットすれば、タフなリ・ジャーミンに与えるダメージは倍増、KOを狙った戦法と言える。しかし、ここも耐えるリ・ジャーミン!

そして8回、これだけ一方的な試合展開になると、ダウンの1つでも欲しい嶋田。先手を取りながらもリ・ジャーミンに手を出させ、カウンターを打ち込む。そして連打をまとめるが、最後まで決定的なシーンを作ることが出来ずに試合は終了。

圧倒的にクリーンヒットで勝る嶋田が、フルマークの判定勝利で無敗をキープした。

嶋田淳也選手、タフなリ・ジャーミン選手に手を焼いたが、圧巻の完封劇。多彩なテクニックを披露し、戦績を8戦7勝(2KO)1分とした。KOこそ逃したが、玄人好みのボクシングを堪能できた一戦だった。

第1試合:4R/フェザー級

×尾川 裕ニ郎(EBISU)vs 〇岡崎 真人(スターロード)0-3判定

尾川裕ニ郎は、2021年9月プロデビュー。高校を退学になり、19歳の時にプロボクサーになるため、福岡県北九州市から上京してきた叩き上げ。デビューから2連敗したが、アップライトに構えた、リズミカルなボクシングで現在3連勝中のアウトボクサー。

岡崎真人は、2022年9月プロデビュー。デビュー戦は、先にダウンを奪いつつも有効打で負った出血のため試合続行不可能となり、不運なTKO負け。その後はTKO、ダウンを奪っての判定と2連勝を飾る。これまで、全ての試合でダウンを奪った左ストレートが武器のサウスポー。

試合は、1回から両者のファイティングスピリッツがぶつかり合う打撃戦となる!まずはアウトボクサーの尾川がノーモーションの右ストレートで、岡崎のバランスを崩すと、今度はお返しとばかりに、岡崎が左ストレートを放ち、尾川をロープまで弾き飛ばす!尾川は、なんとかクリンチでピンチを脱したかと思いきや、岡崎の追撃の左クロスが炸裂!尾川は大の字にひっくり返り、先制のダウン!ここまで、わずか1分半の出来事。これで終わりか?と思ったが、尾川は立ち上がり試合続行。フットワークを使い初回を乗り越えた。

2回、フットワークを使い下がる尾川を岡崎が追う展開で、ますます岡崎のプレスが強くなる。そんな岡崎は、尾川をロープに追い詰めると左ストレートからの右フックを叩き付け、2度目のダウンを奪う!さすがに試合終了かと思いきや、再び立ち上がった尾川。ここで試合を決めたい岡崎は、終始プレッシャーをかけ続けるが、尾川のフットワークと右ストレートで捉えきれず。3回、オーバーペースだったのか、岡崎のプレスがやや弱まり、体が流れる場面も。逆に尾川は、ダウンのダメージを感じさせない動きで先手先手で仕掛ける。このラウンドは尾川が取り返した。

そして最終4回、尾川のダメージ、岡崎の疲労は五分五分か。両者、積極的に手を出し合うアグレッシブな攻防に、まだ観客の少ない後楽園ホールだが大きな声援が巻き起こる!決定打は打ち込めないものの前へ出続ける岡崎、下がりながらも右ストレートを返す尾川の激戦は判定に持ち込まれた。判定は、36-38、35-39、35-39で岡崎の勝利!前半のリードを守り切った勝利だった。

岡崎真人選手、常に攻撃的なファイトスタイルは、シンプルに見ていて面白い!全試合でダウンを奪うパンチ力も魅力的。この試合を見てファンになった人が多いのでは。

尾川裕ニ郎選手、2度のダウンからよく巻き返した!サウスポーのアウトボクサーという利点をさらに磨きをかけ、このスタイルを確立して欲しい。

今大会は、“アンディフィーテッド”と呼ばれる無敗のホープが集結した贅沢な大会だった。特に、“全勝”や“全KO”は更に魅力的!今回、OPBF東洋太平洋フェザー級新チャンピオンとなった中野幹士選手は、11戦11勝10KO無敗。1試合だけKOを逃した猛者だ。

さらに、帝拳ジムには7戦7勝7KO無敗のパーフェクトレコードを誇る村田昴選手がいる!そんな村田昴選手は、10月5日開催「第24回WHO’S NEXT」でWBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座決定戦のリングが控えている。中野選手同様に、全勝のままタイトル獲得なるか!今から楽しみだ!

次回9月21日の『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.23』は、日中平和友好4V4親善試合!WHO’S NEXT強化育成選手に指定された、堀池空希、伊藤千飛が満を持して出場!お楽しみに!

U-NEXTでは、今回レポートした『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.22』を2024年10月7日まで配信中!

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