海人×野杁正明 最強の約束──それぞれの頂を目指して
シェア

海人×野杁正明 最強の約束──それぞれの頂を目指して

2024.06.08 12:00

この記事に関する写真(5枚)

  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・THEMATCH
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・KAITO
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・NOIRI
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・hon DSC5175 (1)
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・hon DSC5183 (1)

Edited by

「THE MATCH 2022」で武尊vs.那須川天心に次ぐ夢のカードとして注目された 野杁正明vs.海人の日本中量級最強決定戦は、手に汗握るハイレベルな攻防の末に延長判定で 海人に軍配が上がりました。あれから海人はホームリング=SBを中心にキャリアを重ね、 GLORY世界王座への再挑戦を目標に掲げ、野杁はK-1でのキャリアにピリオドを打ち、 新天地ONEへと戦いの場を移しました。互いに実力を認め合う2人が「THE MATCH 2022」での 戦いを振り返ると共に、それぞれが目指すベルト、そして今後について語り合ってくれました。



──「THE MATCH 2022」で対戦した2人の対談ということでこの対談が実現したことに驚いたファンの方も多いと思います。最初に対談の話を聞いたときはどう思いましたか?

野杁:僕は全然大丈夫でしたよ。同じ階級の選手と交流しないとか話すのが嫌だというのは一切ないですし、むしろ色々と話をしてみたかったので嬉しかったです。よろしくお願いします。

海人:僕もこうして野杁さんとお話できる機会はなかなかないので、対談のお話をいただいた時は嬉しかったです。こちらこそよろしくお願いします。

──お2人からその言葉を聞けて、こちらの緊張もほぐれました(笑)。実は2人が顔を合わせてどんな感じになるのか不安だったので。年齢的には野杁選手が31歳、海人選手が26歳ということで、海人選手は野杁選手のことを昔から見ていましたか?

海人:はい。それこそK-1甲子園に出ている頃から見ていて、その時の印象はホンマに強いなっていう。その一言に尽きます。僕は色んな選手の試合を見るのが好きなんですけど、そのなかでそう思うのは野杁さんだけなんです。

野杁:ありがとうございます(笑)。

海人:まず野杁さんは他の選手とは技のキレが違うんですよ。それでいて、その中に芯が通ったパワーがある。見ていてもそれが分かるし、明らかに他の選手とは違うなと思っていました。

野杁:僕がOISHIジムに所属していた時に先輩の(日下部)竜也くんがSBの試合に出たこともあって、SBの試合はよく見ていて、海人選手の名前は知っていました。もともと70kgの選手じゃなかったのに、相手がいないからという理由で70kgまで階級を上げて試合をしているところを見て、若くて勢いもテクニックもある選手が出てきたなと。団体も戦う舞台も違うので、交わることはないだろうなと思いながら、1ファンとして海人選手のことを見ていましたね。

──そんな2人が2022年に東京ドームという大舞台で試合をするわけですが、お互いやるならこの相手だろうと思っていましたか?

海人:そうですね。僕が「THE MATCH 2022」でやるなら野杁さんしかいないと思っていました。

野杁:ああいう(色んな団体の選手が出る)大会だったんで、僕が他団体の選手とやるとなったら海人くんしかいなかったんで。もし海人くん以外でオファーが来てたら、断ってましたね。あの大会は武尊くんvs那須川天心のための大会で、そこに華を添えられる試合じゃないと出る意味がない。だったら相手は海人くんしかいないと思ったんで、海人くん以外だったらお断りしていましたね。

海人:僕も同じです。僕の場合は他団体の70kgの日本人選手とはほぼ全員やっていたので、あの舞台で戦う相手と言ったら野杁さんしかいなかったし、野杁さんが言ったように武尊さんと天心くんがやる大会に出るとなったら、本当にトップ同士の試合じゃないといけないと思っていたんで、そうなったら相手は野杁さんしかいないと思っていました。

──海人選手からするとずっと昔から見ていた野杁選手と戦うことになったわけですが、試合が決まってからどんな気持ちで練習していたのですか?

海人:僕は野杁選手の技や戦い方を真似させてもらっていたので、そんな選手と戦うのは変な気持ちでした。今までの相手とは全然気持ちが違うし、僕も色んな選手とやってきましたけど、一番ワクワクしたし、楽しみで仕方がなかったですね。練習中からずっとワクワクというか楽しみだなという気持ちが抑えきれなくて、ひたすら練習しまくっていました。

──ずっと海人選手のことを知っている人や周りにいる人たちからしたら「あの野杁正明とやるの?」というリアクションですよね?

海人:はい。で、みんなに負けると言われて(苦笑)。でもずっと練習してくれている仲間たち、トレーナーのお父さんは「絶対勝てる。だから頑張れ」と言ってくれて。僕自身、悔しい気持ちもありつつ、自分が不利という予想も逆にモチベーションになったというか。それをひっくり返すことも込みで試合が楽しみでした。

──野杁選手は海人戦に向けて、どんな練習をしていましたか?

野杁:いつも通りの練習でしたけど、僕も強い選手とやりたかったんでワクワクしかなかったです。

──あの試合を見ていて、海人選手がかなり野杁選手の対策を練って準備しているなと思いました。実際はどうだったのでしょうか?

海人:野杁さんはずっとやりたいと思っていた選手ですし、昔から見ていた選手でもあったし、自分だったらこうしたら勝てるなとか、もし自分が野杁さんとやることになったらこうしたいなとか、戦う前からずっと考えていたんです。それがいざ現実にになって対策を練ったので、かなり対策はしていました。

野杁:いざ試合が始まったとき、僕は海人くんがどういう戦法で来るのかなと思ったんですよ。距離を取るのか、それとも僕と同じスタイルで(前に)来るのか。そしたら僕と同じスタイルで来てくれて、こういう感じで来るんだなと。それで僕が得意の左ボディを打ったら、それに対する海人くんのカウンターや返しが凄く速かったんです。その時に「あっ、だいぶ対策されているな」と思いましたね。

海人:左ボディへの返しはしっかり対策をしていて、色んなパターンを練習していたんですけど、野杁さんが言う距離の話でいくと、正直トレーナーと練習している時に話していたのは、自分の距離を守って戦うことだったんです。でもいざ試合になって野杁さんと向かい合ったら、『あっ、これは絶対下がったらあかんわ』と思って。それでそこは意地でも下がらないと思って気持ちでいきました。

野杁:そうだったんだ。

海人:そういう意味では試合が始まった時に野杁さんに飲まれたみたいな感じはあります。お互い前に出て試合をする練習はほとんどしていなかったので、そこで勝てるか負けるかは分かりませんでしたが、『絶対に野杁さんには負けたくない』という気持ちが大きかったので、そこは意地と気持ちで戦いました。

野杁:僕は海人くんに合わせてスタイルを変えるつもりもなかったですし、海人くんがどういう戦い方をしてきても、僕のスタイルを崩すつもりはなかったので、いつも通りの展開で KOを狙っていました。ただそこを上手く止められてしまったなって感じでしたね。

繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・THEMATCH
22年6月「THE MATCH 2022」で対戦した海人と野杁。オープンスコアで行われた一戦は1Rから一進一退の攻防が続き、インターバル中に10-10のコールが続くたびにどよめきが起こる。延長に入った瞬間、東京ドームに大歓声が起き、マスト判定の延長ラウンドでは海人が勝利を収めた。

──例えば自分の想定よりも強かった点はありますか?

野杁:全体的に上手くて強くて、戦っていても本当に強い選手だなと思いました。具体的なところでいうと海人くんは対応力が凄いんですよ。その場その場で耐え凌ぐにしても、ワンパターンになる選手が多いんですけど、海人くんはいろんなパターンを持っているので、戦っていてやりづらかったです。

──試合自体は本戦では決着がつかず、延長までもつれる接戦になります。インターバル中や判定を聞いている時はどんな気持ちだったのですか?

野杁:あの試合はオープンスコアだったので、インターバル中にスコアが読み上げられて、ずっと差がつかなかったので、ラウンドを重ねるに連れて試合が盛り上がっていたのは分かっていました。観客の期待に応えるじゃないですけど、それ以上の試合を見せないといけないし、メインにいい形で繋げるつもりではいたんで、とにかく必死でしたね。

海人:試合中、本当に楽しくて、楽しくて仕方なくて。ボディも痛かったし、与座キックも初めてやられて、最後の方は与座キックを蹴られた方の足の感覚がなかったんです。そのくらい痛かったんですけど、野杁さんと戦うのが楽しすぎて、変な話「まだ試合をしていたい」と思ったんですよね。だから本戦の判定を聞いている時も延長に行ってほしいと思っていて、いざ延長が終わったときも「ここで終わらずに、もう1Rやりたいな」じゃないけど、そんな気分に変わってましたね。

野杁:僕もここ最近の試合の中では久々にやっていて楽しかったですね。正直、最近の相手は試合を楽しむ前に終わっちゃうことが多かったんですけど、フルラウンド戦ってもそんな疲れなかったですし、まだまだやれるっていうか、やりたかったっていうか、戦いながらワクワクしていた試合だったなと思います。

海人:僕は試合をやる前が一番ワクワクしていて、試合中に相手と戦いながら楽しいと思うことはほとんどないんです。でも野杁さんとやった時は試合前だけじゃなく、試合中もずっとワクワクが止まらなかったです。

──マスト判定の延長戦で決着をつけるという意味では、どんな心境で戦っていましたか?

野杁:延長は1Rしかないし、マスト判定だったので、行くしかないと思ったんですけど、なかなか上手く攻めて行けず、僕は海人くんに判定を持っていかれたなという印象でした。

海人:僕はどうだったんだろうな…。もちろん勝ちたい気持ちは凄くあったんですけど、それよりももっといっぱい戦いたかったし、試したいこともあったし、勝ちたい勝ちたいというよりは、この相手をどうやって倒したらいいんやろうとか、そういう気持ちだったかもしれないですね。ただ、あの時の自分のレベルで明らかに(ポイントを)取ったという展開には作れていなかったので、勝つためには倒すしかないと思っていました。野杁さんを倒したい。そのためにはどうしたらいいか。それを楽しみながら考えてました。

野杁:延長の判定を聞いたときはそうなるよなという感じで。マスト判定だったら取られたと思ったので、そこは悔しい気持ちでした。試合に負けたこと自体が久しぶりでしたし、日本人に負けたのも2016年に秀さん(山崎秀晃)に負けて以来だったので「ああ…やっちまったな」という感じでした。

海人:僕は判定を聞いた直後は、野杁さんに勝てたと思って本当に嬉しかったですね。ただいざ試合が終わって落ち着いてみると、もっとこうしたかったなとか、ああしたかったなとか、もっと戦いたかったなとか、そんな感情ばっかりで。判定を聞いた直後は本当に嬉しかったですけど、試合が終わってちょっと落ち着いたらそんな感情でしたね。

野杁さんと戦うのが楽しすぎた(海人)

──試合が終わって、東京ドームのバックステージなどでお話しする機会はあったのですか?

野杁:会場から帰る時に声をかけていただいて、僕は家族でいたんですけど、家族みんなが「さっきまで戦っていたとは思えないぐらい凄い好青年だね」って感じでした。相手によっては試合が終わってもピリピリする人もいますけど、お互いに「ありがとうございました」と言葉をかわして、僕は海人くんのおかげでさらに強くなることができましたし、あの試合は負けはしましたけど、本当に海人くんには感謝しかなかったです。

海人:僕もバックステージで話したことは憶えていますし、野杁さんと同じ気持ちですね。

繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・KAITO
24年2月に元ONEムエタイ王者ペットモラコットに敗れた海人。2カ月後の4月に自身が保持するSB世界王座をかけてのリベンジママッチに臨み、見事にペットモラコットを撃破した。
繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・NOIRI
23年7月にヨーロッパの強豪パラスキフと対戦した野杁。タイフン・オズカンと接戦を演じたパラスキフを右ミドル一発でKOし、その攻撃力が70kgでも通用するところを見せつけた。

──「THE MATCH 2022」以降、よりお互いの試合を気にして見るようになりましたか?

野杁:海人くんはめちゃくちゃ試合するじゃないですか。僕は全試合見ているんですけど、海人くんは体幹を活かした戦い方もできるし、当て勘の良さもあるし、カウンターも上手い。そしてしっかり倒せる。間違いなく日本トップレベルだし、世界で通用する選手の1人だと思います。僕もいつかは絶対にリベンジしたいって思っている相手の1人なんで、それまでは圧倒的に勝ち続けて、もっともっと強くなってほしいなと思います。

──これはぜひ野杁選手に聞きたかったのですが、海人選手は何でもできるコンプリートファイターですが、一番の強さの理由はなんだと思いますか?

野杁:本当にトータル的に何でもできるんですけど、ただ単に何でもできるだけじゃないんですよ。何でも倒せる武器を持ったうえで、相手の出方や戦い方によって、それを使い分けられる。その対応力や器用さが海人くんの強さにつながっていると思います。

──逆に海人選手は自分と戦ったあとの野杁選手の試合をどういった目で見ていましたか?

海人:試合をする度にまた強くなっているなというのが率直な意見ですね。野杁さんは今でも技のキレやスピードが上がっていて、ここまでのトップの選手になると、なかなかキレやスピードが上がることってないと思うんです。でも野杁さんはそれが出来ていて、僕とやった時よりも間違いなく強くなっているなと思いました。さっきは僕のことをしっかり倒して勝っていると言ってもらいましたが、それこそ野杁さんもしっかり倒して勝っているし、あれは相手が強い弱いじゃなくて、野杁さんが強いからなんです。僕は野杁さんとやった試合を何回も見ているんですけど、たまに「あの野杁さんの圧力とようやり合ったな」と思います。改めて言いますけど与座キックはめちゃくちゃ痛くて(苦笑)、しかも野杁さんは与座キックと奥足ローを混ぜて蹴ってくるんですよ。さっきも言った通り、試合の後半は足の感覚がなくて、パンパンに腫れてたんですよね。試合している時は絶対に倒れへんとか、痛いところは見せへんとか思ってやっていますけど、お客さん目線で客観的に試合映像を見ると、よく頑張ったなと思います。

野杁:でもローとボディじゃ倒れないですよ、トップ選手は。僕は絶対にローじゃ倒れないと思ったから、どこかで顔を効かせないといけないと思ったし、ああなるのは想定内でした。

──僕が印象に残っているのが、昨年12月に海人選手がペットモラコット・ペッティンディアカデミー選手と試合が発表されたときに、野杁選手がSNSで海人選手を激励して海人選手もそれに返信していましたよね。あのやりとりを見て熱くなったファンは多かったと思います。

野杁:やっぱり僕に勝った男なんで、ずっと勝ち続けてほしいと思っていますし、そこは純粋に頑張ってねというメッセージを送らせてもらいました。

海人:あの時は本当に嬉しかったし、絶対に勝たないといけないなという気持ちになりました。色んな人に期待してもらっているんですけど、野杁さんの『期待しているよ』って一言はちょっと違うものなので。最初の対戦ではペットモラコットに負けてしまいましたが、すぐにリベンジできてよかったです。

──そして今お2人は新たな目標に向かって戦っているところです。野杁選手はONEと契約してONEのベルト、海人選手は昨年獲ることが出来なかったGLORYのベルトを目指しています。ちょうど時期を同じくして新しい目標・新しい道に進み出しました。

野杁:僕はK-1時代からずっと強いヤツと戦いたいと思って走り続けてきたのですが(K-1では)ONEに出ている選手とは戦うことができないという状況で。僕は現役中は常に挑戦していきたいという気持ちでいるし、次に挑戦する場所はONEしかないと思ったので、ONEに参戦することを決めました。

海人:僕は去年8月に(テイジャニ・)ベスタティに負けて、GLORYのベルトを獲れなかった悔しさもあるし、一度逃しているベルトだからこそ、絶対に獲らないといけない。GLORYのベルトを逃したまま、違うものを目指したとしても、絶対に次には進めないと思いました。ベスタティは世界のトップ選手ですし、ベスタティにリベンジできるとしたらGLORYのベルトをかけた戦い以外はないと思うので、そういう意味でもベスタティにやり返したいし、GLORYのベルトに挑戦したいです。GLORYのベルトを避けて、どこかの世界一になったとしても、僕はそれは世界一じゃないと思うので、しっかりGLORYのベルトを獲って真の世界一を目指したいと思っています。

お互いの世界一を目指して戦っていけば、いつか戦う日がくる(野杁)

繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・hon DSC5175 (1)
野杁正明(のいり・まさあき):1993年5月11日、愛知県出身。K-1甲子園2009優勝を経て、2010年3月にプロデビュー。11年にKrush YOUTH GP 2011で優勝。13年9月、第2代Krush-67kg王座戴冠。17年6月、ゲーオに勝利して第2代K-1スーパー・ライト級(-65kg)王者となる。21年9月の第2代K-1ウェルター級王座決定トーナメント優勝、K-1の2階級制覇を達成する。22年6月「THE MATCH 2022」では海人に延長判定で敗れた。23年3月にジャバル・アスケロフ、同年7月にはアマンシオ・パラスキフをKO。2024年3月にK-1と契約満了、4月にONEとの契約を発表。6月8日「ONE167」でシッティチャイ・シッソンピーノンと対戦する。60戦49勝(25KO)11敗。175㎝。team VASILEUS所属。

──これはずばりお伺いします。お2人とも今年開催されているK-1 MAXのトーナメントからオファーがあったと思います。そのうえでそれぞれの道を選んだのはなぜですか?

野杁:僕はあのトーナメントにはやりたい選手がいなかったからです。僕が目指すところは本当の世界一で、仮にあのトーナメントに出て圧倒的に優勝したとしても、ファンの人たちや周りの人たちが野杁正明=世界最強だと言うかといえば、僕はそうじゃないと思うんです。だったら僕はこの選手に勝てば、自分も周りも世界最強だと認めてもらえる相手と戦いたい。だからあのトーナメントに出るという選択肢はなかったです。

海人:僕も野杁さんが今話したことと同じことを思ったし、タイミング的に今じゃないと思いました。仮に野杁さんがトーナメントに出ていたとしても僕は出ていなかっただろうし、僕も野杁さんも今ここでトーナメントに出て優勝しても…というタイミングだったと思います。あのメンバー全員に勝ったとしても、今の立場で何か変わるかと考えたら、そうじゃない気がしたし、野杁さんと同じように僕は僕で目指すべきものがあったので、本当にタイミングの話だと思います。

──野杁選手は6.8「ONE.167」でランキング3位のシッティチャイ・シッソンピーノンと対戦が決まっています。シッティチャイ戦に向けた準備はいかがですか?

配信開始前、または配信終了しています。

野杁:試合が決まる前から準備はしていたんで、約1年ぶりの試合にはなるんですけど、今は過去最高に調子がいいですし、今が一番強くなっている実感もあるんで、単純に楽しみです。

──海人選手は野杁選手とシッティチャイの試合のどんなところに注目していますか?

海人:シッティチャイ選手の上手さとかタイ人独特のリズムがあると思うんですけど、そこを野杁さんがどう潰していくかが素直に楽しみですね。シッティチャイ選手も凄く強い選手なので。

──海人選手は直近2試合でタイのペットモラコットと対戦していますが、vsタイ人という部分でアドバイス的なことはありますか?

海人:僕が野杁さんにアドバイスするのは恐れ多いのですが…ペットモラコット選手とシッティチャイ選手はファイトスタイルや戦い方が違いますが、同じタイ人でサウスポーなので、独特のリズムやミドルのキレ・威力は多少似ている部分もあると思うんですね。でもそこは野杁さんもしっかり対策していると思うし、そこは問題なくクリアできると思うので、そこから先のどう倒しに行くかまでが僕自身は楽しみにしています。

──海人選手は6月15日のSB後楽園大会で元GLORYライト級9位のアルマン・ハンバリアンと対戦します。身長185cmという欧米選手ならではのサイズがある選手で、仮想ベスタティと言えるような相手です。どんな試合をイメージしていますか?

海人:正直僕が目指しているのはここではないし、僕が倒したいのはベスタティであり、僕が獲りたいのはGLORYのベルトです。そういう意味でもハンバリアンに苦戦しているわけにもいかないので、しっかり圧倒したいと思っています。レベルの違いを見せられるかどうかで、今後の展開が違ってくると思うので、しっかり倒したいです。

野杁:まあ…海人くんだったら大丈夫でしょう(笑)。本人も言っているように、ここで負けているようじゃダメだと思うし、ただ勝つだけじゃなくて内容も問われる試合だと思っています。僕も海人くんも次の相手に勝つことが目標じゃないし、それぞれの場所で世界一を目指しているので、ただ勝つだけじゃなくて内容でも勝負しないといけないと思っています。

──あっという間に時間が過ぎてしまいましたが、改めて今日話をしてみて、それぞれどんな感想を持ちましたか?

野杁:対談の前と同じですね、本当に海人くんは〝いい男〟だな、と。色々と話をしてみて、そう思いました。

海人:僕は野杁さんは〝強い人〟だなと思いました。物事への考え方や格闘技に対する姿勢。話を聞いていて強い人はこうだよなというのを感じました。

──僕は今日お2人の話を聞いていて、一緒に練習してみたら面白いのになと思ったんですが、いかがでしょう?純粋に2人が練習するところを見てみたいです(笑)。

野杁:面白いんじゃないですか。僕は全然やりたいですね。僕で良ければお願いします(笑)。

海人:こちらこそ僕で良ければお願いします(笑)。

野杁:僕が大阪に行くことがあったらお願いしたいですし、もし東京で対人練習したい時は連絡ください。

海人:ぜひお願いします。

野杁:ちなみに海人くんは結構スパーリングはやる方?

海人:スパーリングはほとんどしてないですね。自分とスパーリングできる相手もなかなかいないので。

野杁:やりたいか、やりたくないかで言ったら?

海人:やりたいはやりたいです。スパーリングしている方が試合に近い感覚を養えるので。ただどうしても階級が下の選手とやることが多いので、そこは工夫しながら練習しています。野杁選手はスパーリングはどうしてるんですか?

野杁:実は3年ぐらいスパーリングはやってないんだよね。

海人:ええ!!

野杁:KREST時代は週2回スパーリングの日があったんだけど、スパーリングで自分の攻撃で拳を痛めたりするから、それで普段の練習ができなくなるのがもったいないと言われて。だから試合前でもマススパーをやるくらい。

海人:それは意外でした。

世界一を目指すからこそ格闘家。本物を目指したい(海人)

繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・hon DSC5183 (1)
海人(かいと):1997年8月21日、大阪府出身。2014年、プロデビュー。17年、SB日本スーパーライト級王座戴冠。18年、S-cup65kg世界トーナメント優勝。21年、REBELS-BLACKスーパーウェルター級王座(初代KNOCK OUT-BLACK同級王座)奪取。22年6月「THE MATCH 2022」で野杁正明に延長判定で勝利。23年3月、RISEミドル級王座奪取。同年6月、SB世界スーパーウェルター級王者に。8月にGLORY世界ライト級王座に挑戦も判定負け。24年2月、ペットモラコットに延長判定で敗れるも4月のダイレクトリマッチで勝利し、SB世界王座初防衛。6月15日、GLORY王座再挑戦を目指し、元GLORYライト級9位のアルメン・ハンバリアンと対戦する。64戦55勝(24KO)8敗1無効試合。180㎝。TEAM F.O.D所属。

──確かに野杁選手がほとんどスパーリングをやっていないというのは僕も非常に驚きました。

野杁:ようは考え方だと思うんですよ。マスにしてもミットにしてもシャドーにしても何も考えないでただ単にやっている選手と、色々と頭を使って考えながらやっている選手は全然違うんで。究極ちゃんと考えてやればサンドバッグだけでも強くなれると思うし。もちろんマススパー・対人練習をやれば、そこで人を相手に技を試すこともできますけど、大事なのは考えてやることです。

海人:僕もイメージを持って練習することは大事やと思っていて、対戦相手が決まれば相手と戦うことをイメージするし、相手が決まる前は自分の理想の動きや自分が強くなるための動きをイメージする。それはシャドーとかサンドバッグとか1人でやる練習でも出来ることなので、そういう練習でも強くなることは出来ると思います。それもあった上で僕はスパーリングが好きなんで、色んなことを考えながらスパーリングして、倒しにいく感覚を養っています。そこは使い分けていますね。

──格闘技に対する向き合い方、強くなることへの貪欲さ、そして強い相手と戦って勝ちたいという想いなど、2人は共通点が多いなと思いました。お互いにシンパシーを感じる部分はありますか?

野杁:日本に留まったままだと、誰もが認める世界一にはなれないと思うので、僕はそういう世界一、本物を目指して戦っていきたいです。

海人:今って本物を目指している選手が少なくなってきていると思うんですよ。別に強くなくても知名度があったらいいやとか、そういう考えの選手が増えつつあるなかで、僕は『格闘技・格闘家はそうやないやろ!』と思うんですね。本物になって世界一強い男になる・世界一を目指すからこそ格闘家であり、格闘技をやっている意味があると思っているので、野杁さんも同じやと思うんですけど、本物を目指していきたいです。

野杁:今僕と海人くんは戦う舞台が違いますけど、お互いがお互いに団体のベルトを獲って、またいつか交わる時が来ればいいなと思います。

海人:同じ時代に同じ階級に野杁さんがいて、どういう形になるかは分からないですけど、僕は絶対にいつかやる日がくると思うし、その時は世界一を決める戦いになると思います。これから野杁さんは勝ち続けてONEのチャンピオンになると思うので、僕も勝ち続けてGLORYのチャンピオンになります。

──今はそれぞれの道を進んでいる2人が、いつかまた交わる時がきて、それが世界一を決める戦いになったら、それほど熱い試合はないと思います。

野杁:お互いの世界一を目指して戦っていけば、いつか戦う日が来ると思うし、そうなったら「THE MATCH 2022」を超える衝撃を与える試合になると僕は思っています。海人くん、今日はありがとう。これからもよろしく!

海人:こちらこそありがとうございました。よろしくお願いします!

中村拓己=文/若原瑞昌=写真

この記事をシェア

この記事に関する写真(5枚)

  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・THEMATCH
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・KAITO
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・NOIRI
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・hon DSC5175 (1)
  • 繧ソ繧、繧「繝・ヵ繧・繝・・繝・032 037 豬キ莠コテ鈴㍽譚・hon DSC5183 (1)

Edited by

格闘技 特集の記事一覧

もっと見る