『アンチヒーロー』最終回。「共に、地獄に堕ちましょう」稀に見る傑作、その結末は?
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『アンチヒーロー』最終回。「共に、地獄に堕ちましょう」稀に見る傑作、その結末は?

2024.06.17 14:00

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長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ”な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』最終第10話。白木の裏切りにより逮捕されてしまった明墨。自身を裁く法廷で、明墨の最後の戦いが始まる──! 

※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。

アンチヒーロー_第10話_07
©TBS

逮捕された明墨(長谷川博己)は、窮地に立たされてもなお志水(緒形直人)の裁判の再審を目指し、赤峰(北村匠海)と紫ノ宮(堀田真由)に、手がかりを見つけるよう指示していた。そして赤峰は、糸井一家殺人事件の薬毒物検査を担当した平塚の元部下から、平塚が生前残した「科学者として赦されない過ちを犯した」という言葉を聞き、改ざんの可能性の糸口を見つける。

そんな中、明墨の証拠隠滅罪幇助に関する裁判が始まった。

アンチヒーロー_第10話_05
©TBS

白木(大島優子)が、緋山(岩田剛典)のジャンパーが明墨法律事務所に保管されていたと証言すると、続いて証人出廷した緋山は、ジャンパーは羽木社長を殺害した際に着ていたもので、明墨の指示で処分したと告白する。明墨の弁護で無実となった緋山が、あらためて羽木社長殺害を自白したのだ。

すると伊達原(野村萬斎)は緋山から、明墨が志水の冤罪を晴らすために緋山を無罪にしようと、証拠を隠滅させたことを聞き出す。伊達原は自ら糸井一家殺人事件を持ち出し、緋山が撮影したという志水の冤罪を示す証拠動画は存在しないことを強調した。

アンチヒーロー_第10話_14
©TBS

続けて、明墨が弁護した沢原(珠城りょう)に入れ知恵をして志水の冤罪記事を書かせたことや、病魔と戦っていた元検事・桃瀬礼子(吹石一恵)の情報には信憑性がないと論陣を畳みかける。

さらに、検察を辞める前の数カ月間、明墨は根拠のない憶測と虚言のパフォーマンスを繰り返し、糸井一家殺人事件についてうそぶきヒーローになりたがっていたと心象操作を図った。

明らかに形勢不利、追い詰められたかのように見えた明墨だったが、勝利を確信し余裕の伊達原に「随分と必死ですね。検事正は、真実を追い求めているというよりは、必死にご自身の疑惑を払しょくしようとしているように見えます」と言い返すと、「まもなく、志水さんの再審請求を行う予定です。新証拠が見つかりましたので」と断言した。

伊達原は顔を強張らせながらも、「でしたら、見せてもらいましょうか?」と返す。加えて緑川(木村佳乃)が「志水死刑囚が冤罪でないとすれば、被告人がやってきたことはなんの正義もない、悪質極まりない司法への冒涜です。その新証拠がなんなのか、語られる必要があります」と証拠を出させるよう声を荒げた。

アンチヒーロー_第10話_06
©TBS

第2回公判。

明墨は、志水の犯行を示す物証がないまま拘留満期を目前に焦った検察が、殺害毒物を改ざんして志水が犯人と断定したという仮説を説明し、根拠となる薬毒物検査の鑑定書を新証拠として提示した。

アンチヒーロー_第10話_13
©TBS

対する伊達原は、買収した白木から新証拠の内容を聞き出し、周到に対策を講じていた。毒物についてはすべて説明がつくと余裕綽々で反論を始め、弁護側の提示した書類は「捏造しない限り存在するはずがない!」と高らかに断言した。

すると明墨が「ではなぜその存在するはずがない書類を、あんなに必死になって捜したりしたんですか?」と反応した。明墨は、第1回公判の後、鑑定書が保存されている科捜研の資料室に伊達原が入室していたと指摘、その様子を収めたビデオ映像もあると突きつけた。

映像には、鑑定書を抜き取る伊達原がはっきりと映っていた。明墨は、書類を提示しても捏造だと一蹴されるだろうと予測し、事前に証拠隠滅に動く伊達原を押さえるために、ニセモノの書類と、小型のカメラを仕込んでいたのだ。

アンチヒーロー_第10話_03
©TBS

明墨が、黙秘して逃げようとする伊達原に、「よおおおおおおおおく、ご覧ください」と迫る様が、先ほどまでの被告人から一転、法廷で戦う弁護士・明墨の雄弁さと恐ろしさの復活を告げる。明墨は、ついに伊達原を直接対決の場に引きずり下ろすことに成功したのだ。

それでも、何かの間違いだと取り乱し「警察内部に明墨法律事務所の人間が入れるわけがない」と反論する伊達原に、緑川が「不正の疑惑がある人間に対して真実を追い求めるのは検察として当然の使命ですよね」と、毅然と言い渡す。

なんと、資料室に書類とカメラを仕込んだのは緑川だったのだ──。

アンチヒーロー_第10話_08
©TBS

実は白木も緑川も、明墨と共闘関係にあった。

緑川は、明墨と桃瀬の同期で、明墨と同じように桃瀬から糸井一家殺人事件のファイルを託されていた。明墨は検事を辞めて検察の外から、緑川は東京地検で伊達原に近づき内側から、糸井一家殺人事件を調べることにしたのだという。

アンチヒーロー_第10話_16
©TBS

明墨と緑川は、羽木社長の殺人事件を機に、緋山と江越の繋がりを掴み、それぞれの方法で志水の冤罪を晴らす道を突き進んだ。だが、ついに見つけ出した志水のアリバイ動画を手に入れる目前で伊達原に動画を踏みつぶされてしまった…。

そこで明墨は、白木に指示し、賭けともいえる勝負に出た。白木が緋山の殺害証拠であるジャンパーを持ち込んで伊達原に寝返ったと見せかけ、明墨を逮捕させることで伊達原を法廷におびき出す。世間が注目する法廷の場で伊達原を追い詰めることができれば、もみ消しようのない証拠になると目論んだのだった。

アンチヒーロー_第10話_04
©TBS

再び、第2回公判の法廷。

明墨は、「殺人の重要な証拠である鑑定書が改ざんされていた。この事実をもって、私は志水さんの再審請求を行うつもりです」と、伊達原を追い詰める。

緑川は、伊達原に「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜(むこ)を罰することなかれ」とささやくと、鑑定書の改ざんの真偽を明らかにすると裁判長に宣言。騒然となる法廷は閉廷された。

これを受けて、瀬古元判事が、12年前の証拠改ざんについて再調査を願う旨を表明。緑川は江越を尋問し、アリバイ動画の存在と、それを伊達原に渡したことを証言させ、伊達原を起訴した。志水の再審に必要な証拠を隠滅した罪として立件したのだ。

アンチヒーロー_第10話_09
©TBS

伊達原の裁判が始まった。

緑川の追求に、伊達原は「記憶にありません」と繰り返すばかりだったが、倉木(藤木直人)が証人として法廷に立ち、ついに証拠隠滅を図ったことを告白し、陳謝した。

続けて証人として出廷した明墨は、志水を自白に追い込み、その自由と尊厳を奪ったことをずっと後悔していたと吐露し、父親の帰りを待ち続けた紗耶(近藤華)の希望を奪ったことを悔やんだ。そして伊達原に「あなたが娘さんと過ごしたこの12年間の幸せは、あなたが志水さんと紗耶さんから奪った人生の上に成り立っているんです」と訴えかけた。

しかし伊達原は、戯言だと鼻で笑うと「志水は横領に手を染めた犯罪者だぞ!社会的に信用を失い、家族を失って当然だろ!それをすべて、私のせいにするのか!誰もが勝ち上がるのに必死な世の中で、足を踏み外した人間は踏みつけにされる。それが真理だ。現実なんだよ!」と怒鳴る。

明墨は語り返す。「法律とはいったいなんなんでしょう。我々は法律によって、白か黒かを公平に判断することができます。ですがそれもしょせん、人間が作り上げた尺度です。法によって白になったことが、本当に白なのか。黒の奥には、実は限りない白が存在しているのではないか。それを考え続けることこそが、こんな世の中を作ってしまった我々の役割なのかもしれません」。

アンチヒーロー_第10話_02
©TBS

「ブラボー!」と嘲笑う伊達原に明墨は目を見開き、「大切な人を守るためなら、誰しも人を殺す。確かに今の私は殺すでしょう。だがそれだけではありませんよ。地獄へと引きずり下ろし、二度と這い上がれないよう見張り続けます」と圧倒した。

「あなたが罪を悔い、その罪を償いたいと思うその日まで。共に、地獄に堕ちましょう」。明墨は伊達原にとっての死神のように笑った。

伊達原は罪を認め、ついに志水の再審が決定した。

12年ぶりに出所した志水が、紗耶の元に駆け寄って抱きしめる。

紗耶の「パパ。おかえりなさい」に、志水が「ただいま。紗耶」と答える。12年間遮られていた親子の“普通の挨拶”だが、その尊さに涙が止まらない。

アンチヒーロー_第10話_11
©TBS
アンチヒーロー_第10話_10
©TBS

その様子を見守った赤峰は明墨を訪れ、「必ず無罪を勝ち取ります」と宣言すると、あらためて明墨に「なぜ、僕を事務所に入れてくれたんですか?」と尋ねる。明墨は、初めて法廷で見た赤峰を思い出し、桃瀬からのメッセージにあった「私たちが、司法の信頼と誇りを取り戻せますように」と重なる信念を持つ赤峰が、志水の冤罪を晴らす力になると考えたと答える。明墨の見込んだ通り、赤峰は信じる正義を貫き、ここまで走ってきたのだ。


そして赤峰は、明墨に「罪を償い、やり直すためにあるのが法律だと、前まで思ってました。でも今は知ってます。罪を償ったからと言って、赦してくれるほど、世の中甘くない。公平でもない。そんな不条理と戦うために、アンチヒーローが必要なのかもしれません」信じて走ってきた正義の道。その先を語り、赤峰は、明墨に告げる。

「だから今度は僕が、あなたを、無罪にしてさしあげます」。

アンチヒーロー_第10話_15
©TBS

純粋に勧善懲悪を目指す正義を掲げてきた赤峰が、明墨の元で清濁併せ呑む弁護士に成長した瞬間だった。アンチヒーローが必要だと語り、自らがそのアンチヒーローになる覚悟を決めた赤峰と、明墨の顔が重なっていくラスト、2人の覚悟に満ちた表情に畏れさえ感じるほどにしびれてしまう。

作中特に強調して語られた、「罪を償っても赦されはしない」という現代の日本を言い当てたセリフの数々は、共感せざるを得ない説得力を帯びていた。だからこそ、明墨の違法スレスレの戦いに、SNS上では怖れながらも心を掴まれる声が集まった。

また「糸井一家殺人事件の真犯人は誰か?」「白木の過去、明墨との因縁とは?」など、判明していない謎への考察や、続編での解明を求める声が放送直後から止まない。白黒つくはずの法廷で、予想を裏切る謎を仕掛けつづけた『アンチヒーロー』の演出と、恐怖にも近い緊張感を保ち続けた俳優陣の演技力の賜物なのだろう。

そして何よりも、赤峰が言う通り、世の中はアンチヒーローたる庇護者を求めているのかもしれない。どのような続編であれ、明墨、赤峰、紫ノ宮、アンチヒーローたちの活躍を、また見たい。

最終回はこちらから

アンチヒーロー3S座談会』はこちらから

配信開始前、または配信終了しています。

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