"任侠女子"も注目のVシネマ。新たな極道ノワールアクション『CONNECT』が「任侠×ラーメン」で目指す日本制覇の道
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"任侠女子"も注目のVシネマ。新たな極道ノワールアクション『CONNECT』が「任侠×ラーメン」で目指す日本制覇の道

2024.08.02 18:00

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Vシネに女性ファンが?「an・an」の衝撃

まさかこんな日が来るとは思ってもいなかった。

かつて隆盛を誇ったものの、ビデオの衰退やインターネットの台頭等の理由から徐々に勢いを失っていったVシネマ。その黄金期ともいえる90年代から、ヤクザものを中心としたそれらの作品を楽しんできた者としては、寂しさを感じる一方で、時代の趨勢を鑑みれば淘汰されていくのもやむなしかと思っていた。そうしてしばしその世界から離れていたのだが、22年のある日、私はとある記事を見て驚く。女性誌「an・an」(マガジンハウス)に、いかつい風体の本宮泰風と山口祥行の写真が、彼らの主演Vシネ作品「日本統一」についてのインタビュー記事とともに堂々掲載されていたからである。

繰り返すが、あの「an・an」に、である。しかもカバーを務めていたのは、King&Prince(当時)の平野紫耀!もちろん13年に始まった『日本統一』シリーズが、数年前から盛り上がりをみせていることは知っていた。とはいえ、それを楽しむメイン層は中高年男性のはず。それがなぜ、しつこいようだが平野紫耀が表紙を飾る「an・an」に!?

そうして私は遅ればせながら、“任侠女子”と呼ばれる女性ファンたちの存在とともに、その隆盛期には考えられなかった層をも取り込んだ形で、『日本統一』シリーズをはじめとしたVシネが幅広く楽しまれていることを知ったのだった。なお、Vシネ=Vシネマとは、89年より始まった「東映Vシネマ」の略称であるため、正しくはOV(劇場公開を前提としないオリジナルビデオ作品)と書くべきなのだが、ヤクザものを中心としたその作品郡の色合いを削がないためにも、以降もここではVシネと表記していく。

Vシネシリーズならではの中毒性

Vシネ人気の復活には、動画配信サービスの急速な発展に加え、コロナ禍による“ステイホーム”が大きく寄与したとされているが、納得のいくところである。思えば、“任侠女子”という言葉はおろか、ビデオすらもまだ普及していない頃、ヤクザ映画専門館に通ってその手の映画を楽しむ女性は、私も含め、一定数いた。それだけヤクザ映画というものには、男性女性にかかわらず、登場人物に惚れ、あるいは自己を投影して共鳴する等、こちらを夢中にさせずにはいない魅力が詰まっている。だが、主に男性客と煙草の煙に覆われた館内での鑑賞に女性が挑むには、かなり敷居が高かったのも事実。そんな敷居が存在しない自室での配信作品鑑賞となれば、当然数も幅も広がるだろう。しかも、『日本統一』などはステイホームが始まった頃には40作に到達しようとしていたように、人気シリーズともなると本数が半端ではない。大河ドラマのごとくのそれを一気に鑑賞できる時間と環境を得たことで、多くの者がハマっていけたことは確かだろう。

日本統一シリーズ
外伝などを含めた『日本統一』シリーズは全60作品以上

実際、その頃、「話題の『日本統一』をどんなもんかと観始めて、5話まで観たところ」と言っていた人がいたのだが、数日後に様子を聞くと、すでに配信されているものはすべて視聴済みだったのだ。もちろん視聴者をそうさせるだけの力が作品にあってのことなのだが、Vシネというものの中毒性を改めて確認しつつも、そこまでか! と驚きを隠せなかったことを覚えている。

CONNECT』オープニングの衝撃

さて、そんな『日本統一』シリーズがあいかわらずの快進撃をみせているなか、今年2月、新たなる任侠超大作シリーズが始動した。『CONNECT 覇者への道』。

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『日本統一』の30作目から制作として参加しているソリッドフィーチャーとユニバーサルがタッグを組んだ、『日本統一』ファンであれば見逃せないシリーズである。それだけに期待は大きく、私もさっそく観始めたのだが、その第1作の冒頭の映像は、任侠ものとしてはある意味、衝撃的なものだった。ここからは、少し長くなるが、そのオープニングの描写にしばしお付き合いいただこう。

とある営業中のラーメン店。その厨房で、客の「チャーシューメン」という注文に応じて店主がチャーシューの塊に包丁を入れている様子を、カメラはまず、俯瞰でとらえていく。店内の防犯カメラのもののようにも見えるこの映像にはどことなく不穏さが漂い、調理台の端に置かれたスマホが発し続けるバイブレーションが何かの予兆にも感じられる。さてはこれからこの厨房内で惨劇が起き、早くも何らかの抗争が始まるのだな──。そんな緊張のうちに画面を凝視しいていると、次に大きく映し出されたのは、大鍋でぐつぐつ沸騰するスープに、整然とタッパーにおさめられたゆで卵とネギの千切りの山。さらに、麺を茹で、タレをスープで溶き、湯切りした麺を入れ、具を乗せ、客に運ばれていくという一連が、工程をほとんど端折ることなく映されていく。そうして客がラーメンをすする音を聞いたとき、観ている私は限界に達した。「ラーメン食べたい……!」。そうなのだ、この任侠超大作の冒頭で、いきなりこちらを待ち受けていたのは、抗争ならぬ、”飯テロ”だったのである!

「任侠道」と「ラーメン道」=『CONNECT』?

ラーメン屋「宗像丸」を営むかたわら、横浜最大の暴力団組織・東洋会の裏仕事を請け負う男・宗像清蔵。東洋会会長の向井に拾われ育てられた恩義から向井に忠誠を誓うこの一本気な男はしかし、単にこのラーメン店を隠れ蓑にしているわけではなかった。東洋会からに違いない着信にもかかわらず、調理中はいっさい応答せず客に提供した後で折り返す。宗像は、ラーメンにも、裏の仕事同様に、自らの流儀に従い真摯に向き合っている男なのである。その飯テロぶりでこちらを悶々とさせつつ、同時にそんな宗像の人となりをもさり気なく伝えていたことを考えると、衝撃的と書いたオープニングは、実に秀逸な導入でもあった。

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Ⓒ 2024 NBCユニバーサル・エンターテイメント

以後、ラーメンは、直後に起きる東洋会にとっての重大な事件のきっかけとなるばかりか、大阪、福岡、名古屋と、登場人物たちが地方に出向いた折りに必ず食すものとして、このシリーズの、いわばスパイスとなっていくのである。しかも、各地元ラーメン店に(名前は出さずとも)敬意を表すかのように、1話の冒頭よろしく、その工程を丁寧に見せながら。もちろん本作におけるラーメンはあくまでもスパイス。でありながらも「任侠道」と「ラーメン道」を真摯な形でダブらせていくその姿勢には、「任侠×ラーメン」というジャンルをマジで突き詰めようという意気込みが。そんな、『日本統一』シリーズとはまた違う、斬新な任侠超大作シリーズの誕生に、心を動かされずにはいられないのであった。

「元官僚の渡世人」という大胆設定をものともしない北代高士

このように、ラーメンというスパイスを極めて真面目に効かせながらもゴリゴリの任侠ドラマとして、他の「任侠×グルメ」作品とは一線を画す本シリーズだが、もうひとつ、大きなフックとなっているのは、宗像を演じる高岡蒼佑、その宗像に心酔し「宗像丸」で働く沢村竜一を演じる山本裕典とともにメインキャストを務める北代高士の存在だろう。

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Ⓒ 2024 NBCユニバーサル・エンターテイメント

北代といえば、「日本統一」の12作から三代目侠和会会長・川谷(小沢仁志!)の息子・坂口の役で参戦し(後に四代目山崎組組長に)、22年にはシリーズ初の劇場版となる『劇場版 山崎一門〜日本統一〜』で主演を務めた、いまや「日本統一」の顔のひとりといえる男である。主演の本宮と山口の人気はもちろん高いが、彼らを慕い、渡世人としても人間としても筋の通った(かつオチャメでもある)川谷のDNAを受け継ぐだけある坂口という役は魅力に溢れ、それを演じる北代の人気も当然のことながら、高い。そんなことからの、本作メインキャストへの抜擢だろうが、これまた効いているのが北代演じる相馬邦人の人物設定である。

1作目の序盤、宗像が東洋会の者から電話で受けた要件(=暗殺)を閉店後に手際よく遂行した後、場面変わって映し出されるのが、霞が関のとある建物。そこに、その長身をスーツに包んだ北代がようやく登場するのだが、彼の映像に被せた「相馬邦人」の名の上には、「財務省官僚」の文字が!いや、キャリアも長くさまざまな役をこなしてきた北代だけに、その立ち姿に違和感はないのだが、「相馬、おまえまだ謹慎中だろ!」と制止する同僚の手を振り払って財務大臣に反発するその顔は……ほとんど任侠ドラマのそれであり。

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© 2024 NBCユニバーサル・エンターテイメント

そうして、不正を許せず大暴れし、結果、大臣より「クビ」を言い渡されるという、すでにして心に「任侠」の文字を刻んだようなこの官僚は、その帰り道、国会議事堂を見ながら大きくツバを吐き、われわれの心をガッチリ掴むのだ。もちろん現実にそんな官僚はおそらくいない。だがここはVシネというある種のファンタジー世界。われわれの内に巣食う鬱憤を晴らしてくれる場所でもあり、また、とうてい現実では起こらないだろうダイナミックな飛躍で楽しませてくれる世界でもあるのだ。「元官僚の渡世人」という突飛な設定を、こともなげに創出してしまうような。そう、その後、紆余曲折の末に「宗像丸」で働くことになった相馬はは東洋会の構成員となり、宗像による「宗像組」の組員となるのである。

脇を固める顔!顔!顔!

こうしてわれらが北代=相馬は、元暴走族のリーダー沢村とともに、宗像が敬愛する東洋会会長の向井の夢「ハマから日本制覇!」を実現すべく奔走していくことになるのだが、その脇を固める顔の充実ぶりも、本シリーズの大きな魅力。Vシネファンならよく知った顔だろう強面の面々が、適所に配されている相関図を見てほしい。心躍ること間違いなし。

CONNECT_相関図

東洋会会長・向井を演じる菅田俊、その実子である直政を演じる波岡一喜、大阪の真道会系花岡組若頭・尾上を演じる舘昌美、そして東京最大の暴力団組織・八王会若頭・黒須を演じる本宮泰風と、『日本統一』とダブるキャストも多く、それぞれの役どころの違いを堪能しながらの鑑賞も楽しいだろう。個人的には、途中から顔を見せるあのお方の登場が特に嬉しかった。『日本統一』では三上組組長・三上を演じ、その人気ぶりからか、三上引退後もドラマにたまに顔を出す、“みんな大好き”古井榮一である。そんな古井を含め、登場人物全員にどのような展開が待つのだろうかとドキドキしながら、『CONNECT』の、おそらくは気が遠くなるほどの長い道のりに、今後も随行しようと思っている。なんといっても、継続中のモンスターコンテツ『日本統一』の目標と同じく、目指すは「日本制覇!」なのだから!

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Ⓒ 2024 NBCユニバーサル・エンターテイメント

『CONNECT -覇者への道-』

ヤクザの世界に足を踏み入れた男たちを描く極道ノワールアクション。
東洋会会長・向井重政に拾われた宗像清蔵は、ラーメン屋を営む裏で東洋会の裏仕事を請け負っていた。暴走族の元リーダー・沢村竜一と元財務官僚・相馬邦人は、宗像についていく決意を固める。そんななか、向井の妻・晴恵と孫の静香が何者かに拉致される。

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